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[キーワードコラム]キーワードからみた韓流動向

検索から見えるオーディエンス分析

hanryu

この記事はクロスリスティングの「キーワードコラム」での連載記事を掲載しています。

少し前になりますが、岐阜県のとあるシンクタンクから「韓流消費に対するアンケート」の結果が公表されました。
その調査では、「K-POP の台頭、食品、コスメをはじめとする韓国製商品ブームのマスコミでの取り上げ方、新聞のテレビ欄における韓国ドラマの占有状況からかなりの盛り上がりを予想したが、結果は予想を下回るものであった。」とまとめられていました。
しかしながら、テレビをつければあちこちで韓流ドラマが放送されていますし、レンタルビデオ店では韓流のタイトルもかなりの数が棚に並べられているのを目にします。また、K-POPのスター達もしばしばテレビや雑誌の表紙などでも見かけます。

私共では週次・月次で検索数のランキングを発表しているのですが、芸能およびドラマジャンルにおいて韓流スターや韓流コンテンツは上位圏の常連となっています。先述の調査結果からはネガティブな印象を受けますが、「冬のソナタ」のヒットに始まったといわれる韓流ブーム、不景気の折テレビ局が以前のような制作費を組めなくなったなどの要因もあったのでしょうが、これだけ日常に浸透しているところをみるともはやブームという見方は適当ではないのかもしれません。

さて、今回は韓流のスター達を検索動向から見ていくことにしましょう。
手始めに、名称の検索数を見てみましょう。図1は、2011年4月から2012年3月までの1年間において、名称の検索数がどのくらいあったのかを、上位20位まで示しているものです。一見して、上位4位までが他を圧倒していることが分かります。
(※名称の検索ワードは表記揺れも含めての総数となっています。)

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以降、期間内における検索数の推移や、検索ワードの中身を見て行きたいと思いますが、20件すべてを見るのは少々骨が折れるので、期間内の検索総数において変化の様子に差異を見受けられる、上位9件までに絞って進めていくことにします。

図2.1および図2.2は、各アーティスト(以降、便宜的にタレント、俳優、アイドル、グループ等を総称して「アーティスト」と呼ぶこととします。)の、名称の検索数の推移を表わしたものです。  まず、図2.1ですが、「チャン・グンソク」「少女時代」「KARA」は前半に所々で大きく検索数を伸ばしているものの時間の経過と共に検索数の減少傾向を見ることができますが、「東方神起」では夏から秋にかけて盛り上がりを見せています。

次に図2.2を見てみると、「キム・ヒョンジュン」では定期的にスパイクが立っており、定期的に話題を提供しているように見えます。「JYJ」は秋に大きく検索数を伸ばしている一方、「BIGBANG」では5月以降の減少傾向の後、年が明けてからやや持ち直しているような印象です。「イ・ビョンホン」は年間を通じて変動が小さく、「パク・シフ」は6月頃にブレイクした様子を窺い知ることができます。

graph2
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さて、次に名称と一緒に検索されているワード(共起ワード)がどのようなものなのかを見て行くこととしましょう。
図3は総検索数を母数とした場合に、共起ワードがどの程度の割合で出現しているかを、アーティスト毎に示したものです。
なお、対象とした期間は2012年1月~2012年3月までの3カ月としています。
(※共起ワードは意味的に同等あるいは近しいと考えられる15のカテゴリに区分けしています。)

graph4

ざっと眺めた感じでは、それなりに特徴を表わしているように思えます。
例えば、「少女時代」「KARA」では「ブログ/ブログタイトル」の検索数が少なく、逆に「メンバー名/プロフィール」の検索数が多くなっていますが、「東方神起」では「メンバー名/プロフィール」「ブログ/ブログタイトル」共に検索数が多くなっています。
また、「ゴシップ系」の検索数が多い「キム・ヒョンジュン」、「ブログ/ブログタイトル」以外には共起ワードが殆どない「JYJ」、「地域名」が目立つ「チャン・グンソク」、「コンサート/イベント情報」「ドラマ/映画」「ゴシップ系」が目立つ「パク・シフ」、などといったようにそれぞれの特徴を指摘することは出来そうです。

これら各アーティストと各共起ワードの関係性を視覚的に把握すると共に、アーティスト間での近似性を見るために、このデータをもとにコレスポンデンス分析を行ってみることにしましょう。
コレスポンデンス分析とは、基となるデータの要素間の関係性を視覚的に把握するための多変量解析の手法の一つで、類似度や関係性の強い要素同士は相対的に近くに、そうでない場合には相対的に遠くにプロットされることとなります。

コレスポンデンス分析の結果は、図4のようになり、直観的・視覚的に各アーティストおよび共起ワードの関連が理解しやすくなっていることが分かると思います。

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この結果を読み解いてみると、「少女時代」「KARA」「BIGBANG」は類似度が相対的に強く、楽曲やDVD、画像、動画などとまとまっており、「チャン・グンソク」「イ・ビョンホン」はファン関連やブログ系との関係性が強いように見受けられます。 また、「キム・ヒョンジュン」は「ゴシップ系」、「パク・シフ」は「ドラマ/映画」とそれぞれ関連性が強く、「東方神起」と「JYJ」とは類似性がありそうなものの、「東方神起」はコンサート関連やプロフィール系と、「JYJ」はブログやSNS系との関連性がそれぞれ、より強いように見えます。

前述の「アーティスト別共起ワード」、並びに「アーティストと共起ワードの関係」を踏まえて、実際に各アーティストの特徴や共起ワードの内容に目を移すと、前述の内容に対してより納得感を得ることができると思えます。
例えば、「少女時代」「KARA」「BIGBANG」の3アーティストは、いずれもダンス・パフォーマンスで評価を得ており、DVD、動画といった視覚的要因と強く結び付くことは容易に想像できます。
また、ファン関連との結びつきがより強く見える「チャン・グンソク」「イ・ビョンホン」「パク・シフ」では、ファン・ブログやファン・ミーティング関連のワードへの偏りを確認することができます。
「キム・ヒョンジュン」では、共起ワードからはブログへの偏重が見られるのですが、それ以上にゴシップ系、こと整形に関するワードが際立っており、このことがコレスポンデンス分析に強く影響したものと考えられます。

「チャン・グンソク」「イ・ビョンホン」「パク・シフ」「キム・ヒョンジュン」の4アーティストは、いずれもブログへの偏りが認められるという事実があります。
これは、ファン行動が5因子に分類された場合の実際の行動の中心を形成する「情報収集」、「作品の収集・鑑賞」いう行動のうち「情報収集」という特性がより強く反映されたものと言えるでしょう。
(※小城英子 「ファン心理の構造 (2004、2006)」)

「東方神起」「JYJ」においては、そもそも同胞でありK-POPの先駆的存在でもあることから、それぞれのファン行動が大きく異なることは逆に考え辛いものと思われます。
以上、共起ワードから分類されるアーティストの特徴を見てきましたが、分析結果をご覧になって納得される方は多いのではないでしょうか。
ここでは、対象期間を限定しているためこのような結果となりましたが、対象期間が変わればその時その時での話題なども変化しますから、当然結果も異なったものとなるでしょう。

最後に、この点を確認するために、期間を延ばして共起ワードがどのように変化していったのかを、いくつか特徴のあるものを概観して終わることとします。
先述のコレスポンデンス分析では、2012年1月からの3カ月間を対象として分析を行ってきましたが、図5では、名称の検索数で上位4アーティストの共起ワードの検索数について、2011年4月から12カ月の推移を示したものです。なお、共起ワードについては任意でピックアップしたものです。
(※グラフの検索数は、年間の検索数を基準として指標化した値を利用しています。)

まずは「KARA」ですが、コンスタントに新曲を出していたこともあり、曲名の検索数で顕著なスパイクが立っていることがわかります。これにやや先んじて「新曲」というワードの検索数が増加していることが特徴的です。
「チャン・グンソク」では、スポットでの話題に関するワードが一時的に増加していることが分かります。このことは、他のアーティストでも見られる事象ですが、代表としてここで取り上げて置きましょう。共起ワードから考えると、期間前半においては「ゴシップ系」や「その他」に近いポジションにあったのではないかと推測できます。
次に、「少女時代」ですが、興味深い傾向をみることができます。共起ワードとしては同一の「画像」「動画」「壁紙」なのですが、スペースの有無で差異を見ることができます。対象期間の前半においては概ね「スペース有」の検索数が多いのですが、期間が移行するにつれて、「スペース有」の検索数が減少の傾向を見せ、逆に「スペース無」の検索数が増加傾向を見せていることがわかります。これは、検索ユーザーの利用しているデバイスがPCからスマートフォンや携帯電話へのシフトが進んでいることを示唆しているようにも思えます。

最後に「東方神起」を見てみましょう。対象期間の前半において目立った活動がなかったためか、「ニュース」や「最新」といった漠然としながらも何かしら情報を得たいと思われるファン行動を表わす共起ワードの検索が多いことが特徴的です。後半以降、楽曲の発表やライブ活動の再開に伴い、「チケット」といった具体的な目的を有する検索行動へと移行していることがわかります。

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以上、韓流のアーティストに関しての検索動向を見てきました。人が変われば話題も変わり、時が過ぎればまた新たな出来事が生ずるのですから、常に人々の関心事も変化していくことでしょう。
どのような言葉が人々の話題に上り、そして検索行動を行っているのか、引き続き注目していくこととします。

【元記事】[第7回]キーワードからみた韓流動向(キーワードコラム)