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リターゲティング広告の運用で失敗する3つの理由

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リターゲティング

 さて、前回記事での宣言通り、サイトリターゲティング(一般的にリタゲはサイトリターゲティングのことを指すので、以下リタゲと略します)について書きます。

 リタゲは、日本ではGDN(Google ディスプレイネットワーク)が2010年にリマーケティング(リターゲティングと同義)を開始し、2011年にCRITEOがダイナミックリターゲティング(動的にバナーを出しわけるリタゲ)を展開、YDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)が2013年にサイトリターゲティングを開始し、そしてこの1~2年で広まりつつあるDSPによるリタゲ配信と、この数年で一気にブレイクした印象があります。

 リターゲティングは、一言で言うと「サイトに訪問したユーザーをターゲティングする手法」です。仕組みはこうです。

 (1)サイトにリタゲ用のJavaScriptタグやイメージタグを設置
 (2)サイトに訪問してそのタグを読み込んだブラウザに、ユニークなIDを書き込んだクッキーを付与
 (3)そのクッキーを持っているブラウザが、広告枠があるページを訪問したら、リタゲ用の広告を配信

 リタゲの用途は大きく分けて3つほどあります。
 (1)サイトに来たけどコンバージョンしなかった人に商品購入や会員登録を促す
 (2)サイトに来てコンバージョンした人に別の商品を勧める
 (3)サイトに来た人に会社名や商品名を覚えてもらう

 リタゲには良い点もあれば、気を付けなければならない悪い点もあるため、実施する前にその性質についてよく理解しておきましょう。

 ではタイトル通り、リターゲティング広告の運用で失敗しがちな主な3点について、その要因や対処法を紹介します。

何度もしつこく広告を配信

 同じようなバナーを短期間に何度も何度も見させられた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。せっかく良い商品でもあまりにしつこく勧められると嫌になってくるのが人間の感情ってものです。気を付けないと、ユーザーを増やすどころか、ブランド毀損によりアンチユーザーを増やす結果にもなりかねません。

 フリークエンシーキャップ(同じユーザーに広告を見せる回数の上限)を設定することで前述のようなリスクを軽減することができます。GDNやDSPの管理画面で設定可能です。(YDNにも2014/3/7に実装されるようです)

 設定時に必ず議論になるのが、最適なフリークエンシーキャップの回数についてです。これは何を目標にするのか(認知度アップ?好感度アップ?購買?)、広告の対象商品は何なのか、見せる相手は誰なのかでも変わってきますし、バナーのデザインを何度見てもうるさくないものにする、バナーのデザインを複数用意する、広告を見た回数でバナーを出しわける等の工夫によっても、フリークエンシーキャップの最適な回数は変わってきます。

 色々試してみて、そのキャンペーンに最適なフリークエンシーの回数を見つけ出すPDCAサイクルこそが重要になるでしょう。

サイトを訪問した人を一括りでターゲティング

 サイトを訪問した人というセグメントで一括りにして、ターゲティングするだけでは、良い結果は出しづらいかもしれません。サイトを訪問した人の中でも、1日以内の人、1週間ほど経っている人、1か月前の人では、それぞれ広告を配信した際の反応が異なります。このように訪問者をさらにセグメントすることで、そもそも配信対象から除外したり、見せる広告のメッセージを変えたり、広告の配信単価を変えたりする運用が可能となります。

 前述の「サイト訪問からの経過日数」以外にもセグメントの仕方は色々あります。例えば、旅行サイトであれば、国内旅行、海外旅行等の「訪問ページの種類毎」にセグメントしたり、リスティング広告経由でサイトに訪問した人、ディスプレイ広告経由でサイトに訪問した人等の「流入経路別」、クリックされた広告の訴求内容等による「クリエイティブ別」、CVした人、してない人、頻度等で分ける「CV別」にセグメントしたりすることも有効です。さらに、より高度なタグの出しわけをすることで、ヘビーユーザー、ライトユーザーといったセグメントや、購入した商品別のセグメントなども考えられますが、ここまで来ると、リタゲというよりも、自社の見込み客から既存顧客までを包括的に管理しているプライベートDMPによるオーディエンスターゲティングを検討した方が良いかもしれません。

リタゲのレポートだけを評価

 これはリタゲだけではなく、リスティング広告やディスプレイ広告、その他WEB広告も含め、広告すべてに言えることですが、ある施策単体に限定して計測したデータをもとに施策の評価をすると判断を誤る確率が高まります。リタゲのレポートだけを見て、CTRが高い!とか、CVRが高い!とか、CPAが良い!と言って評価してはいけません。

 その理由は、ユーザー視点で考えるとよく分かります。ユーザーは日常で様々な情報に触れています。TVCMや、番組内で紹介される情報、友人や家族との会話や、フォローしている人のツイート、フェイスブックのタイムラインに流れてくる友達の写真、検索結果に出たテキスト広告、いつも見ているWEBサイトに表示されたバナー、このような多様な情報接触のタイミングがある中で、初めて知った情報を元に一気に商品購入まで意思決定してしまうケースは稀です。商品について知って、理解を深めて、好感を持って、その後にようやく購入することを考えると、最後に接触した広告の数字だけで評価するには無理があることが分かるでしょう。

 特にリタゲの場合は、そもそもサイトに来ていたユーザーですから、中にはほとんど購入意思を固めていたユーザーも含まれます。そのようなユーザーは、リタゲ広告を見なくても購入していた可能性もあります。このような事象を考慮して評価する必要があるわけです。但し、ユーザーに影響を及ぼす要因がWEB上だけとは限らないため、正確な計測は現在のテクノロジーでは限界があります。アトリビューション分析という概念が、計測できるデータからなるべく正当で包括的な評価を行うことを目指していますので、興味がある方は、アトリビューション分析で検索してみて下さい。

 一応、アトリビューション分析とまではいかなくても、シンプルにざっくりとリタゲの効果を評価する方法はあります。リタゲを実施している時期が、実施していない時期と比べて、(広告経由かどうかに関わらず)トータルで購入者数が増えているのか、購入回数が増えているのか、売上が増えているのか、利益や(その時期に投下しているマーケティングコスト全てを考慮した)ROIが増えているのか、をチェックすることです。季節要因やその期間に実施している施策の差分は考慮する必要がありますが、概ねリタゲがうまくいっているのか、うまくいっていないのかが分かるのではないでしょうか。

 以上の3つをリタゲ運用を失敗する理由としましたが、そもそもリタゲだけだと新規顧客は増えません。新たな見込み客にサイトに訪問してもらう施策も必要です。PR、SEO、友達紹介、メール、リスティング広告、ディスプレイ広告、CM等、様々な施策とセットでプランニング、実行、評価を行うことが最も重要であるということで、まとめとさせていただきます。

 では最後に、前回のクイズの答えです。

――――前回のクイズ――――

AdExchange/SSPは、オープンなプラットフォームとして、多くのDSPと接続し、入札競争によって、媒体収益を高めるという役割がありますが、一方で媒体を厳選して、価値の高い媒体や枠だけを集めていくことを目指す動きもあります。このように、RTBに対応しつつもクローズドなプラットフォームのことを何と呼ぶでしょうか。

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 答えは、プライベートエクスチェンジです。
プライベートエクスチェンジが目指すのは、高付加価値の広告枠をデジタルで自動売買することです。媒体側(サプライサイド)から見ると、質の良い悪いに関わらず、一律でDSPから一斉に入札を行うスタイルは、高い単価で広告枠を販売していた媒体側にとっては大きなリスクとなるため、その回避手段として有効です。また、広告主側(デマンドサイド)から見ると、ブランドを損なわずに広告配信先のサイト内容や掲載位置が良いものだけに絞って広告を配信できるというメリットがあります。

 次回は、DMPについて書きます。お楽しみに!

 トップ画像引用元:Image courtesy of jscreationzs / FreeDigitalPhotos.net

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この記事を書いた人
岡野 敬太
岡野 敬太
2001年にNTTコミュニケーションズ(株)に入社、データセンター、ホスティングサービスの法人向け営業を経験した後、2005年以降、新規WEBサービス企画・開発の部署で、アフィリエイトサービスや音楽配信サービス、サッカーのモバイルコンテンツサービスの立ち上げに従事。2011年9月より、NTTレゾナント(株)から(株)クロスリスティングに出向し、同社事業戦略室ビジネスデベロップメントグループのマネージャーとして、検索ログを活用した新規事業開発を担当。リスティング広告コンサルティングおよび検索ログ分析を担当する同社営業本部コンサルティンググループのマネージャー等も兼務。