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2011年10月21日(金)

[第4回]
映画の興行収入とタイトル検索の関係を調べてみる

厳しい残暑が続く中、9月9日に電力使用制限令が解除されました。 オイルショックの影響による1974年の発動以来となる今回の電力使用制限令は、各業界に大きな影響を与え、また消費者の行動にも変化をもたらしたものと想像できます。
今年のゴールデンウィーク頃には、震災の影響で消費者の「安・近・短」志向が高まっていましたが、今夏も節電や放射能の問題でゴールデンウィーク頃と同様に消費者の行動には変化があったものと思われます。

消費者の「安・近・短」志向の対象の一つとして映画を挙げることができると思いますが、この夏の節電ムードは映画業界にとって追い風の一つであったとも考えられます。 映画の興行は「興行場法」によって規制を受けるのですが、この法令で定められている規制の一つに「温度を28度以下に保たねばならない」というものがあります。
また、経済産業省の発表によると、「エアコン・テレビ・照明」だけで一般家庭の日中の使用電力のほぼ6割を占めるとのことですから、節電と快適な娯楽とを兼ねた映画鑑賞は、消費者にとってまさに一石二鳥であったと言えます。
「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」や「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」というビッグタイトルが公開された今夏ですが、今回は節電も兼ねた余暇の過ごし方の一つとして、「映画」に注目してみたいと思います。

各映画タイトルの成績として興行収入がありますが、各タイトルによって上映期間は異なるため、今回は「公開週における週末興行収入」(以下、週末興行収入と呼ぶこととします。)を指標として据えることにします。つまり、公開初日以降の最初の土曜日と日曜日の興行収入の合計です。
週末興行収入のデータには「Box Office Mojo(http://boxofficemojo.com/)」で公開されているデータを利用することにします。(※サイト上ではUS$表示なので、当時の為替レートで円に換算しています。)
なお、今回の調査対象となっている映画タイトルは、ゴールデンウィーク翌週以降から8月末迄に公開され、公開週のスクリーン数が45以上の35タイトル(邦画16タイトル、洋画19タイトル)です。
この35タイトル以外にも、上記の条件に当てはまるアニメの劇場版やゲームからのスピンアウト作品などがありましたが、検索ワードの判別が難しいため対象からは除外しています。

まず、調査対象タイトルの検索数の推移を確認することから始めることとしましょう。
図1は、邦画と洋画とに分けて月曜日から日曜日までの1週間毎の検索数の推移を示したものです。グラフの横軸は期間を表わしており、公開週を含む1週間を「0W」、公開週の前週を「-1W」、前々週を「-2W」、公開翌週を「1W」というように表記しています。 また、各タイトルに検索数のボリュームが異なってくるため、ここでは各タイトルの公開週の検索数を基準として指数化した値を採用しています。
さて、検索数の推移の様相ですが、邦画・洋画ともに公開週のピークに向けて増加し、公開翌々週には検索数が落ち着いていることが分かりますが、邦画と洋画とでは特に大きな差異は見受けられません。

図1

邦画・洋画の何れにおいても公開週に一気に検索数の増加が見られますが、このことは公開間際の興味関心の高まりに加えて、TVCMの集中的な投下やTV番組内における週末の映画案内の影響なども非常に大きいものと推測されます。

次に、各タイトルの検索数と週末興行収入の関係を見ていくことにしましょう。
下の図2は週末興行収入と1週間毎の各映画タイトルに関連した検索数の相関を示したものです。 総じて公開週以降においての相関が高い傾向がありますが、公開週ではなく公開翌週の相関が0.59と最も高い値を示しており、興味深いところです。
この点は、おそらく鑑賞意向はあるものの態度を決めかねている人々、また鑑賞者の声が聞こえ始まったことにより新たに観賞意向を持ち始めた人々の行動の結果としてのものと理解することが出来るように思えます。

図2

さて、次に気になるのは邦画と洋画とでは差があるのかないのかという点です。
図3は週末興行収入と1週間毎の検索数の関係を、邦画・洋画別に示したものです。 邦画と洋画とでは、はっきりとした差異を見ることができます。邦画では公開週に向けて相関が強まっていくことが確認でき、特に公開週における相関係数は0.85と非常に高い値を示しています。一方、洋画では公開4週前からは相関の変動にあまり幅がないことが確認できます。

図3

この結果と、前述の検索数の推移状況を併せて考えると、邦画と洋画とでの観賞意向者の動向の違いを窺い知ることができそうです。
邦画では、週末興行収入と1週間毎の検索数の相関が公開週に近づくにつれ高まっていくという事なので、観賞意向者の態度は時間の経過に伴ってより明確に形成されていく過程を示しているものと言えそうです。
一方、洋画では公開4週前から週末興行収入と1週間毎の検索数の相関に大きな変動がないことから、ほぼ1カ月前には観賞意向者の態度は決定されているとものと捉えられそうです。

さて、上述の邦画と洋画とでの「週末興行収入と検索数の相関」の推移の差異は、話題性/前評判という観点で考えて見ると別な一面が見えてきます。
例えば、先行話題が大きく検索数も当初から相対的に大きかったにも関わらず興行的にあまり成功しなかった作品や、あるいは文芸作品のようなあまり一般的な話題に上がり辛いような作品が、公開直前に受賞等の理由によって一気に検索数を増やし結果的に興行的にも予想外の成功を収めたような場合などが調査タイトルに含まれている場合には、邦画の場合と同様の推移になるものと考えられます。
図4ではそのような事例として、ある3タイトルの週末興行収入と検索数の推移を示したものです。
【B】や【C】は、週末興行収入では【A】の後塵を拝しているものの、当初は検索数においては【A】を上回る値での推移となっており、話題性/前評判が高かったものと言えます。ところが-2w辺りからは週末興行収入に応じた検索数に近づく値への変化を辿っており、週末興行収入と検索数の相関が高まっていくことが確認できます。
一方、洋画ではこのような様相にはならずほぼフラットな推移となっていることから、ほぼ前評判通りの週末興行収入であったという事が言えるものと思えます。

図4

今回は、週末興行収入と興味関心の度合いを示すと思われる映画タイトルの検索数を見てきたわけですが、邦画と洋画での観賞意向の態度決定過程の相違は非常に興味深く、普段の嗜好やデモグラフィック情報などを組み合わせれば鑑賞意向者の行動理解に対する一助となるものと思われます。またTVCMの投下量やパブリシティの露出量など、更には口コミなどのSNSデータやタイトルのジャンル等も含めて見て行けば、より精緻で興味深い結果が得られそうです。

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